岩 崎 元 郎 の


 

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南ア深南部前衛・沢口山と寸又峡温泉

 南アルプスの主脈は、甲斐駒ヶ岳から光岳までを指す。甲斐駒の北に位置する鋸岳からとする人もいるが、主脈南端は光岳とされていて、これは動かない。光岳以南の広大で原始性の残るエリアを南アルプス党の面々は「南ア深南部」と、愛情をこめてそう呼ぶ。

 今となっては、はるか昔、蒼山会同人を創立して間もない冬山合宿で、聖岳から光岳まで縦走した。1日目は聖沢小屋まで。2日目は聖岳を往復。3日目光小屋まで。4日目は光岳を越え、寸又川源頭に下り、川沿いの軌道上を黙々と歩く。この日は軌道脇の飯場小屋に泊めて貰った。5日目も軌道上を黙々と歩いて、寸又峡温泉に辿り着いた。あわてて帰ることもないので、「大鉄山の家」という宿を見つけて登山靴を脱いだ。いい湯であった。

 いまでこそ林道が拓かれたりして、多少は便利になった深南部だが、初心者向きの山ではない。しかし、南アルプス党の一人として、一人でも多くの山好きに深南部の魅力を味わって欲しいと思う。「光岳を起点とする深南部の山々が次第に高度を落とし、深南部の山と呼ぶには多少人臭くもなって、無理があるかなと思えるあたりの山々、その代表格が寸又三山と呼ばれる朝日岳・前黒法師岳・沢口山。登山のベースとなるのが寸又峡温泉だ。ここに紹介する沢口山は、三山のなかでは最初に登るべき山であり、中高年登山者でも無理なくチャレンジできる山だ。南アルプス深南部の魅力の一端にふれることができよう」とは、以前ガイドブックに沢口山を紹介したぼくの拙文である。

 東海道本線金谷駅から大井川鉄道に乗り換える。終点が千頭駅だ、っていうか、ここまでが普通の電車で、この先、井川までかの有名なトロッコ電車が走る。寸又峡温泉へは千頭駅からバス。約40分走ると感心するほどの山奥に、温泉街が出現する。ひなびた雰囲気がぼくは好きだ。

 東京から日帰りは無理なので、寸又峡温泉で前泊が必要。午後3時か4時くらいまでに宿に入って、周辺を散策したり、湯船にのんびり手足を伸ばしたらいい。ぼくのお勧めは、静岡に停車する朝一番の新幹線でアプローチ、この日沢口山に登って寸又峡温泉に一泊、翌日朝日岳か前黒法師岳に登るというプラン。時間とお金を上手に使ったプランだと思う。

 温泉街のはずれから道標に導かれて登山道に入る。杉林の中のジグザグの急登を、歩幅を小さくゆっくり登ると尾根上に出る。歩き易い山道を登っていく。傾斜の落ちた所が木馬ノ段(きんまのだん)、樹相が美しい。鹿のヌタ場を過ぎると、山頂への急斜面だ。登り切った稜線上を右に辿れば板取山、沢口山へは左に一投足である。登り3時間、下りは同じコースを下って2時間だ。

 寸又峡温泉は硫黄泉、無色透明でサラッとした感じ。湯から上がると肌がすべすべするので、「美人つくりの湯」などという宣伝文句もある。宿泊施設は民宿、旅館、ホテルが十数軒ある。観光協会に予算を明示して相談するといい。旅館やホテルで入浴のみも可だが、町営の露天風呂もある。ツーリングの名所でもあり、休日になるとオートバイがよく集まる。


                                                       2012.4.15 記



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