岩 崎 元 郎 の


 

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白馬三山と白馬鑓温泉

 白馬岳は、山好きなら誰もが憧れる我が国屈指の名峰である。花の名山としても人気が高い。ずっと以前、朝日岳から白馬岳を縦走したことがあった。参加者の一人がウルップソウを見たいという。ウルップソウは白馬を代表する花の一つなのである。八月も後半に入っていたので、まだ咲き残っているか心配だったのだが、雪倉避難小屋の近くに咲き残っているのが数株あって、担当リーダーとしてほっと胸をなで下ろしたことを憶えている。

 それが今年(2012年)の7月、海の日の連休を利用して白馬岳を訪れたときのこと、紫色の絨毯のように見えるウルップソウの大群落と出逢ったのだ。山は大好きだが、花が目的の登山をする人ではない。可憐な花が咲いているのを見て、可愛いいなくらいは思うが、感激して声を上げるようなことはない。それが、このときばかりは感激して声を上げてしまった。一面、ウルップソウのお花畑だったのだ。まさに花の白馬岳であった。

 しかし、ぼくは花よりダンゴ派。白馬エリアには、鑓温泉という最高のダンゴがある。白馬鑓ヶ岳の中腹、標高2,100m地点、小屋の横の大きな岩の割れ目から湧出しているそうだ。以前は日本最高所の温泉と称していたが、立山のみくりが池温泉や硫黄岳下の本沢温泉の方が高い位置にあるので、「日本最高所の温泉」という看板は下ろしている。みくりが池温泉にも本沢温泉のも入ったことのあるぼくとしては、鑓温泉は湯舟に浸かったまま妙高・戸隠連山を一望するロケーションに恵まれ、山岳温泉としては第一級と評して過言ではあるまい。江戸時代から猟師や樵の間では知られていた、歴史ある温泉なのだそうだ。

 白馬岳への表登山道は、大雪渓と言っていいだろう。しかし、大雪渓を登路にすると、東京朝発ちでその日の内に白馬山荘に入るのはいささかキツイ。ぼくのお勧めは、栂池からのコースだ。昔は7時のあずさで松本に行き、大糸線に乗り換えて白馬駅に向かったが、現在では長野新幹線で長野に行き、バスで白馬に向かうのが早い。

 東京朝発ちで、一日目は白馬大池まで。二日目、白馬岳を越える。杓子岳も山頂を踏んで行こう。白馬鑓ヶ岳に立てば、白馬三山が足下になったわけだ。三山縦走に大満足して、下って鑓温泉にドッブーン。気分は最高。三日目に、のんびり猿倉へと下山する。

 何回かドッブーンした鑓温泉だが、忘れられない思い出は1964年3月のこと、昭和山岳会の春山合宿での鑓温泉だ。計画は杓子岳東尾根を登り、唐松岳までの縦走だった。

 一日目は猿倉台地に雪洞を掘った。高度が低いので気温が高く、天井から水滴が垂れてシュラフがびしょ濡れになった。二日目は東尾根を登って杓子岳に立った。白馬鑓ヶ岳とのコルに下り、雪洞を掘る。三日目、パーティーの体力と技術を考えると不帰ノを越えられないと判断したリーダーは、鑓温泉から小日向のコルを越えて猿倉へとエスケープを決断した。白馬鑓を越え下って鑓温泉の辺り、一人がズボと胸までもぐった。下は温泉で空洞だったのかも知れない。運良く、ドッブーンせずに済んだ。48年前の出来事である。


                                                          2012.12.15 記




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