岩 崎 元 郎 の


 
   
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丹沢・檜洞丸と中川温泉
 
 
登山界の先達大島亮吉は、谷川岳を近くて良き山と評したと聞くが、僕たち東都岳人にとって、丹沢こそ近くて良き山であった。昭和38年4月に昭和山岳会に入会して、本格的な登山修行が始まった。登山の基本は歩くこと、新人時代は岩登りはやらせて貰えなかった。一年目の最後、鷹取山で岩登り訓練があった。二年目になると同期の仲間と丹沢に行ってこいという。まずは東丹沢、水無川流域の沢からスタート。本谷はもちろん、前大沢にはじまって、モミソ沢、流れノ沢、源次郎沢、沖ノ源次郎沢、金冷し沢、木ノ又大日沢、背戸ノ沢左俣、右俣、戸沢、新茅ノ沢、ヒゴノ沢と流域の支沢のほとんどをトレースした。

 四十八瀬川流域は勘七ノ沢とミズヒノ沢、寄沢流域に入って滝郷沢と水棚沢、本流のイイハシの大棚を攀じ登った。寄沢側から檜岳山稜を乗り越えて玄倉川側に入れば、そこから西は西丹沢だ。玄倉川流域ではモチコシ沢、同角沢、ザンザ洞をトレースしてから中川川流域に入った。悪沢、箱根屋沢、本棚沢、湯ノ沢、大滝沢の雨棚も攀じ登った。丹沢は近くて良き山、ぼくの登山道場だった。中川川流域の魅力は、アプローチが不便な分、登山者が少なく山深いところにある。中川川を挟んで対峙する、檜洞丸と畦ヶ丸が「山」でなく「丸」というのが面白い。どちらもでっかくて登り甲斐ある山だ。丸についての考察は機会を改めることにして、西丹沢のチャームポイント、檜洞丸に登ってみよう。

 JR御殿場線松田駅か小田急線新松田駅前からバスで中川川の上流、西丹沢自然教室まで入る。ここからツツジ新道を登って檜洞丸に立ち、犬越路から用木沢出合いに下り西丹沢自然教室に戻るコースを紹介する。バス停から5分ほど車道を進とコース入り口。山道を小1時間登るとゴーラ沢出合、ここからゴーラ沢と本棚沢の分水尾根を登って行く。5月下旬から6月上旬にはトウゴクミツバツツジやシロヤシオが素晴らしい。

 登り切ると石棚山稜に合流し、ひと頑張りで1,601mの山頂に立つ。ゴーラ沢出合から2時間。展望はないが、ブナ林の静かで居心地のいい頂上だ。青ヶ岳山荘は、東へ5分ほど下ったところにある。犬越路へは、北西に伸びる丹沢主稜線を辿る。大コウゲ、小コウゲを越え、犬越路までは1時間40分、明るく開けた鞍部である。ここから下る道は東海自然歩道になっている。用木沢出合まで1時間、白石沢林道に出たら左折、30分で西丹沢自然教室に戻る。帰りのバスを中川温泉で下車し、温泉で汗を流してから帰ろう。町営日帰り温泉「ぶなの湯」がある。

 中川温泉は新松田駅からバスで1時間、武田信玄の隠し湯といわれている。こんな所までと感心したが、国盗り物語的スタンスで地図をよく見ると、甲府からそれほど遠い距離ではない。北条勢との綱式で負傷した兵士を養生するのに、格好の保養地だったかもしれない。泉質はアルカリ性単純温泉、湯宿は10軒ほど。歓楽的要素は少なく、のんびりするのに最適な温泉だ。地図を広げて眺めながら、中川温泉に泊まった翌日は、檜洞丸に登ろうなんて考えず、二本杉峠から屏風岩山に登ってみようかな、なんて想いを巡らしている。


                                                         2014.9.16 記




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