岩 崎 元 郎 の


 
   
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一切経山と高湯温泉
 
 
一切経山は、吾妻山の一峰である。吾妻山は山名ではなく、福島、山形両県にまたがる大きな山群の総称。際立つ一峰はないが、1,900m以上の山が十座近くも群がる東北を代表する高峰群であり、日本百名山である。日本百名山をめざしている人は、最高峰の西吾妻山に立つことで吾妻山に登ったとしている。山群の西を代表するのが西吾妻山だとすると、東を代表するのが一切経山である。西吾妻山に勝とも劣らぬ名山だ。

 山名の由来は、「阿倍貞任が一切経千巻を山頂に埋めた」とか「空海が山中に一切経を埋めた」とかいう言い伝えによる。一切経山という名前の響きがいい。この山名だけでも、登ってみたくなる。福島駅前から浄土平にむかうバスに乗ると、30分ほどで高湯温泉だ。以前はその先にゲートがあって、有料の磐梯吾妻スカイラインに入ったのだが、現在は無料になっている。福島駅前から1時間10分、登り切れば浄土平である。浄土平を睥睨するかのように聳える一切経山は、火山だ。草木をまとわず白と赤茶の入り交じった山肌は迫力満点、山肌からは白い噴煙が上がっている。

 浄土平を起点に一切経山を往復するのは、比較的楽な登山といえる。そこまでの自信がないという人には、目の前にある吾妻小富士が一周1時間ほどで登ってこられる。浄土平から西に一登りした酸ヶ平の先、鎌沼へのハイキングは文句無しに楽しい。何回も訪れている鎌沼だが、紅葉が美しかったり、チングルマが可憐だったり、季節に応じて自然を満喫させてくれる。

 吾妻小富士の南側、スカイラインの兎平駐車場から東へ少し入った所に、ひっそり建っているのが吾妻小屋。東北大震災の年まで遠藤守雄さん、雅子さんご夫妻が管理されていた。お布団はふかふかで真っ白、食事はおいしい、お二人の人柄を反映して山の匂いが漂っている山小屋だった。大震災の年、遠藤さんが癌でお亡くなりになり、淋しくなってしまった。

 ぼくのお勧めは、1日目は浄土平から東吾妻山に登って吾妻小屋泊、2日目、一切経山にのぼったら五色沼に下り、不動沢を経て高湯温泉に至る山歩き。前回は汗を流しただけで帰ってしまったが、次回は高湯温泉に一泊したいと考えている。

 高湯温泉の泉質は硫黄成分濃度の高い硫黄泉、スカイラインの手前、車道に沿って十軒ほどの温泉旅館が並んでいる。温泉街といっても歓楽的な雰囲気がないのがいい。ここは慶長年間から湯治場としてしられる、由緒ある温泉なのだ。

 前述した一切経山から高湯温泉に下って汗を流した露天風呂、お湯は白濁して首までお湯に浸かっていれば、首から下は見えなかった。ぼくら男性はこっち側、女性陣は目隠しをはさんでむこう側だ。まさかお湯のかけっこはしていないだろうが、女性陣はキャピキャピと大賑わい。写真撮るならカメラ渡すよというと、撮る撮るといって目隠しの下のわずかなすき間から手が伸びてきた。その手の平にカメラを乗せる。家に戻ってフィルムを現像に出す。紙焼きされた写真には露天風呂に浸かる女性陣の楽しげな顔が並んでいた。もちろん、首から下は白濁したお湯で見えないからセーフ?いい記念になったと思っている。

                                                          2012.1.15 記




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