岩 崎 元 郎 の


 
   
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霧ヶ峰と上諏訪温泉
 
 
霧ヶ峰は深田久弥さんの名著『日本百名山』の一座である。“座”は山の数え方である。鳥は一羽、二羽、獣は一頭、二頭と呼ぶように、山は一座、二座である。一山、二山と呼ぶこともあるが、神々が降臨する場所としては、“座”がふさわしい。ところで霧ヶ峰には、霧ヶ峰と指させる峰はない。霧ヶ峰は山域の名称であって、山名ではないのだ。だから冒頭の「・・・一座である」という書き方は、自分で書いておきながら正しくない、と思う。

 利尻岳や富士山は“山名”である。霧ヶ峰は“山域名”、大峰山や霧島山は“山脈名”である。深田さんの背中を追いかけて、百の頂きに立ってみようと思っても、山域名や山脈名で紹介されている山は、どの山に立てばその山に登ったことになるのか、とまどう山がいくつかある。だれが言い出したのかは知らないが、山域や山脈では最高峰に立てば登ったことになる、というようなコンセンサスがあるようだ。霧ヶ峰は「車山」、大峰山は「八経ヶ岳」、霧島山は「韓国岳」という具合にだ。

 霧ヶ峰の車山は、素直にうなずけるのだが、大峰山の場合、八経ヶ岳は大峰山脈の最高峰ではあるが、『日本百名山』の「大峰山」の項で語られているのは、山上ヶ岳のことである。霧島山の場合、韓国岳は最高峰だが、語られているのは、高千穂峰のことである。阿寒岳が困る。阿寒岳という山はなく、在るのは雌阿寒岳と雄阿寒岳である。標高が高いのは雌阿寒岳の方である。しかし、深田さんがこの地を訪れたとき、雌阿寒岳は火山活動が活発で登山禁止のため登れず、登ったのは雄阿寒岳であった。百名山追っかけ人のほとんどは、前述のコンセンサスに従って雌阿寒岳に立って善しとしていたのだが、待ったが入った。『日本百名山』の後記に、深田さんご自身が「本書にあげた百の名山は、私は全部その頂上に立った」と書いていらっしゃる。阿寒岳で登るべきは雄阿寒岳でなければならない、というのが「待った」の主張であった。ややこしいのは、阿寒岳という項名の下のカッコの中に記されている標高が1,503m(現在の標高は1,499m)、これは雌阿寒岳を指している。さあ、どうする・・・。

 ぼくとしては、『日本百名山』は日本の名山百座のリストアップではなく、名山、名山脈、名山域のリストアップと理解して、自身のこだわりに従えばいいじゃん、と思っている。霧ヶ峰では、車山に登らなくても八島湿原に遊べば、『日本百名山』の目次の「霧ヶ峰」に赤丸を付していいと、ぼくは思っている。

 上諏訪温泉は、長野県諏訪市に湧出する温泉で、諏訪湖東岸に温泉街がある。湧出量が豊富だからだろう、旅館やホテルも数多い。市内の一般家庭でも温泉が引かれているというし、温泉入浴施設のある小学校やデパートがある。上諏訪駅では1986年、自由に入浴できる温泉が設置された。ぼくも霧ヶ峰から下って、一度入浴したことがある。残念なことに、2001年に足湯に改装されてしまった。

 泉質は単純温泉と単純硫黄泉で、外傷性諸障害、慢性湿疹、神経痛に効能ありとされている。湖畔に沿って遊歩道も設置され、歩道沿いにはサンリツ服部美術館、北澤美術館などが湯治客を待っている。

                                                         2015.3.15 記

 




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