岩 崎 元 郎 の


 
   
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大菩薩嶺と大菩薩の湯

 「中里介山の小説『大菩薩峠』でもよく知られた大菩薩・・・」、ぼくに限らず同世代の人が大菩薩の案内を頼まれたとすれば、書き出しはそんな風になるに違いない。しかし、最近では「介山」が登場しないガイド記事が多い。察するにガイド執筆を依頼された人が、『大菩薩峠』を読んでいないということだろう。過日、テレビ番組で「失恋・別れの歌」を特集していた。ベスト30曲の紹介があったのだが、ぼくが知っている歌は一曲もなかった。バラエティー番組をみても、居並ぶ若いタレントさんの名前はほとんど知らない。それくらいに時代が変わってしまったのだ、まっいいか・・・。

 金峰山から雲取山を主脈とする秩父山地の南に、大菩薩嶺を主峰にして嶺から南に広がっているのが大菩薩連嶺だ。東京から近く、夜行日帰りができるハイキングエリアとして人気が高かった。大菩薩登山口や西沢渓谷に行くバスは、きれいに整備された塩山駅前ロータリーから発着しているが、ぼくが大学生の頃は、バスの発着所は駅から少し離れた所にあり、夜行で塩山駅につくと、一番バスが出るまでバスの発着所で新聞紙を広げ、ごろ寝していたものだ。

 大菩薩登山口のバス停がある裂石から上日川峠を経て嶺に立ち大菩薩峠に下るか、峠に上がってから嶺に立つのが大菩薩の表登山道であった。23年前の話しになるが、NHK教育テレビ番組「中高年のための登山学」で大菩薩を取り上げた。ぼくが講師役、みなみらんぼうさんが生徒役で、オーソドックスに裂石からスタートした。ゆっくり登って2時間余、上日川峠に上がると車が上がっている。「なあんだ、車でくればよかった」と、らんぼうさんが悔しがることしきり。さらに時代が下って現在、甲斐大和駅から上日川峠までバスが上がるようになった。アプローチが便利になったのだから、歩き甲斐あるコース採りをしたい。

 第一のお勧めは、上日川峠から嶺に立ったら下りは丸川峠、峠から裂石に出てバスで塩山。バスに乗る前に大菩薩の湯で汗を流そう。柳沢峠から丸川峠へ縦走し、丸川荘で一泊するのも面白い。お勧めの第二は、小金沢連嶺の縦走。大菩薩峠に建つ介山荘に泊まる一泊二日の計画だ。介山荘を出て石丸峠を越えると登山者の影がぐっと薄くなる。小金沢山を越え、牛奥ノ雁ヶ腹摺山を越え、黒岳を越え湯ノ沢峠までくると、湯ノ沢峠まではタクシーが迎えにきてくれる。この先、笹子峠までが大菩薩連嶺とぼくはきめている。

 石丸峠から牛ノ寝通りを辿って小菅村に下るのも、黒岳から大峠に下り雁ヶ腹摺山に立ち、金山温泉に下るのも、大谷ヶ丸から主脈を離れて滝子山にむかうのも変化にとんだ山歩きができて面白そうだ。大菩薩連嶺は近くて良き山である。

 大菩薩の湯は、大菩薩登山口バス停のすぐ下にある。1000万年前の花崗岩深部に育まれ、湧きだした大地の恵み。世界的にも最高水準の水素イオン濃度PH10.05の高アルカリ性単純温泉。神経痛、筋肉痛、関節痛、五十肩、うちみ、くじき、慢性消化器病、冷え性、疲労回復、健康増進などに効能がある。大菩薩に限らないが、山から下ってきてそこに温泉があるとうれしい。汗のにおいから解放、湯船に手足を伸ばせば、そこは極楽である。

                                                      2018.4.18 記



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